「昼営業を始めたいとは思っているんですが、夜の仕込みが間に合わなくなりそうで……」
こういった相談を受けるとき、決まって聞き返すことがあります。「今の店舗の動線を、一度紙に書き出してみましたか?」と。
多くの場合、答えは「まだです」です。不安の正体は、昼営業そのものではなく、時間と作業の流れが頭の中で整理されていないことにあります。新しく店舗を借りずに、今ある場所で昼営業を始めることを私が勧める理由は、そこにあります。
こんな方におすすめ
- ✅ 夜営業中心で、昼間の厨房・客席を持て余している方
- ✅ 昼営業を検討しているが、夜の仕込みへの影響が心配な方
- ✅ 新しい物件を借りずに収益を増やしたいと考えている方
- ✅ 少人数・短時間で回せる昼業態の仕組みを知りたい方
- ✅ ランチの看板商品が決まらず、二毛作の第一歩を踏み出せていない方

「新店舗を借りる」という選択肢が持つリスクを正直に見てほしい
「昼も稼ぎたい」と考えたとき、真っ先に頭に浮かぶのが「もう一店舗出す」というイメージではないでしょうか。実際、私自身も焼肉・ホルモンの夜営業だけで満足できなくなった時期があり、そのときに真剣に考えました。
でも立ち止まって数字を見ると、新規物件の契約には保証金・内装費・設備費がかかります。仮に月の固定費が15万円増えたとして、それを昼営業だけで回収するのは相当な客数が必要です。しかも、新しい物件には「空白の時間」が必ずあります。仕込み・清掃・移動・スタッフの手配——昼専用の店舗を動かすためのコストは、想像以上に積み上がります。
一方、今ある店舗を使えば、家賃は一円も増えません。厨房はすでにある。客席もある。「払い続けているコストを、昼間も回収する」という発想で始められます。これが、新店舗を借りずに始めることを勧める根本的な理由です。
夜営業への影響を防ぐ——時間と動線を「見える化」する
「昼営業が夜に影響する」という不安は、ほとんどの場合、作業の流れが頭の中でぐるぐるしているだけで、紙に書き出すと意外とシンプルに整理できます。
私が実証店舗で実際に設計した流れはこうです。
- 10:00〜11:00 仕込み・準備(昼営業用)
- 11:00〜14:00 営業
- 14:00〜14:30 片付け・洗い物・清掃
- 14:30以降 夜営業に向けた仕込みへ移行
14時30分に昼の作業が完結していれば、夜の仕込みを始める時間は変わりません。ポイントは「昼営業が終わってから夜の準備を考える」のではなく、昼営業を終わらせる時間を固定し、そこから逆算して昼の仕込みと営業時間を設計することです。
「昼に洗い物が増えて夜がバタバタする」という声も聞きます。それは片付けの動線が決まっていないからです。使う器・調理器具・台を絞り、洗い物の順番をあらかじめ決めておくだけで、閉め作業は30分以内に収まります。店舗によって設備の配置が違うので、一律の正解はありません。店舗ごとに動線を引き直すことが大切です。
業種別に見る——どんな夜業態が昼営業を取り込みやすいか
どんな業態でも同じように昼営業が組み込めるわけではありません。ここでは、よくご相談をいただく業種ごとに、動線設計の考え方を整理します。
居酒屋・酒場
カウンター中心の店が多く、客席の転換がしやすい。仕込みは夜に集中していることが多いため、昼の仕込みを独立させやすい。ただし、夜の仕込みで使う鍋や台と昼の調理器具が重なる場合は、使用順と洗い場の優先順位を明確にしておくこと。
焼肉・ホルモン店
私自身がこの業態です。焼肉店は昼間にロースターを使わないケースが大半で、客席がそのまま使えます。厨房との行き来がシンプルなため、2名で回しやすい構造になっていることが多い。
焼鳥・ダイニングバー
仕込みに手間がかかる業態は、昼の仕込みを極力シンプルにすることが重要です。当日朝に作業が集中しないよう、前日の夜に一部を仕込んでおく設計も有効です。
蕎麦・うどん・定食店
すでに昼営業をしている店も多いですが、「昼のメニューが弱い」という場合、ラーメンのような客単価の高い商品を一本加えるだけで構造が変わることがあります。
どの業態であっても共通しているのは、夜の動線を崩さないことを前提に、昼の設計を積み上げるという順番です。昼ありきで考え始めると、必ずどこかで夜に影響が出ます。
✓ ここまでのポイント
- 新店舗を借りると固定費が増えるが、今の店舗を使えば家賃は増えない
- 「昼営業が夜に影響する」不安の多くは、時間と動線を書き出すことで解消できる
- 業態ごとに動線設計の切り口は異なる。一律の正解より、店舗ごとの最適解が重要
動線を整理すれば昼営業は夜の仕込みに影響しない——そう分かっても、自分の店の場合に当てはめると「どこから手をつければいいか」で詰まる方が多いです。山道家モデルの詳細ページでは、店舗別のオペレーション設計や導入相談の内容を確認できます。説明会への申込みも同ページから行えます。
「5席・3時間」でも収益は生まれる——数字が示す現実
「席数が少ないと昼営業をしても意味がない」という声を聞くことがあります。でも、実際の数字を見てほしいと思います。
私の実証店舗では、カウンター5席・11〜14時の3時間営業で、月間250〜350名のお客様にお越しいただき、月商25万〜33万円という実績があります。客単価は約950円です。
ただし、この数字を「目標」として提示したいわけではありません。営業日数や季節によって変動しますし、立地や業態によっても変わります。実績の中心的な意味は、5席・3時間という小規模営業でも収益を生み出せることです。大きな席数や長い営業時間がなければ昼営業は成立しない、という固定観念を崩すための事実として受け取ってほしいと思っています。
特に夜業態の飲食店にとって、夜に使っていないカウンター5席が昼間だけ稼働するだけで、月に25万円前後の売上が生まれる可能性がある。この感覚を持てるかどうかが、二毛作を始めるかどうかの分岐点になります。
週3日から試す、という現実的な選択肢についても書いていますので、合わせて参考にしてもらえると思います。
「本格的な家系ラーメン。真面目に家系をやっていると思わせる一杯でした」
実証店舗を訪れたお客様
この声は、長時間スープを炊く方式ではなく、タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法を組み合わせた設計で得られた評価です。完成した一杯の満足度が伝わると、リピーターにつながります。夜業態の常連さんが「昼もここで食べた」と言ってくれる。その積み重ねが、安定した昼の売上を作ります。
「どこから手をつけるか」が決まらない場合の整理の仕方
「やってみたいとは思うが、何から始めればいいか分からない」という状態で止まっている方が多くいます。その場合、私がまず勧めるのは次の順番です。
- 今の夜営業の作業時間を書き出す 何時から何時まで、誰が何をしているかを一枚の紙に書く
- 昼営業に使える時間のブロックを特定する 10時〜14時30分の間で、夜の仕込みに影響しない時間帯を確認する
- 使える客席と厨房スペースを確認する 夜に使っていないカウンターや台の数を数える
- 昼の商品を一本に絞る 複数メニューを揃えようとすると仕込みが増える。まず一本で設計する
このプロセスを一人で進めるのが難しい場合、私たちが店舗ごとのオペレーション設計をご一緒します。レシピを渡して終わりではなく、現場で実際に動かせる状態を目指す理由については、別の記事で詳しく書いています。
また、ノウハウを必要な部分だけ選んで導入できる仕組みにした理由も参考になると思います。新しく設備を揃えるのではなく、今ある環境に合わせて必要な部分だけを取り込む、という考え方です。
まとめ——不安の正体を整理すると、始める理由が見えてくる
「昼営業が夜に影響しそう」という不安は、解像度が低いまま頭の中で膨らんでいることがほとんどです。時間・作業・人の動きを紙に書き出すと、多くの場合、問題は「昼営業を始めること」ではなく「動線が整理されていないこと」だと分かります。
新店舗を借りずに今ある店舗で始めることを勧めるのは、コストを抑えるためだけではありません。今の夜営業の質を落とさず、昼間の遊休時間と設備を利益に変える——その両立が、最初から可能な構造になっているからです。
「5席・3時間で収益が生まれる」という実績は、特別な立地や特別な人数があったわけではありません。動線を整理し、商品の設計を丁寧にやった結果です。小さく始めることが、最終的に夜営業とのバランスを守ることにもつながります。
個別のご相談は、お電話でも受け付けています。店舗の状況や夜営業の業態をお聞かせいただければ、動線設計の方向性をお伝えできます。
📞 054-363-2766
「夜に影響を出さずに昼を回す」という動線の設計は、店舗の業態・席数・スタッフ構成によって変わります。自分の店に合った形を確認したい場合、山道家モデルの説明会では導入相談として店舗の状況を個別にヒアリングしています。


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