「昼もやってみたいけど、夜の仕込みが追いつかなくなりそうで……」
こういった声は、相談を受けるたびに本当によく出てきます。夜営業を長年続けてきた飲食店の経営者にとって、昼間の時間帯に新しい営業を組み込むというのは、想像以上に「怖いこと」として映るようです。それは慎重さの表れであって、決して間違いではない。ただ、その不安の多くは「動線が整理されていない状態を想像しているから」という場合がほとんどです。
今回は、夜営業中心の一店舗から昼間の利益を生み出すために、実際にどんな時間設計をしてきたか——その裏側を少しだけ開示しようと思います。
こんな方におすすめ
- ✅ 昼営業を始めたいが、夜の仕込みへの影響が心配な方
- ✅ カウンター席や厨房が昼間まったく使われていない飲食店の経営者
- ✅ 一店舗のまま収益の柱を増やす方法を具体的に知りたい方
- ✅ オペレーションが複雑になることを恐れてランチ営業に踏み出せない方
- ✅ 多角化という言葉は知っていても、自分のお店に当てはめる方法が見えていない方

「夜に影響が出そう」という不安の正体
まず、この不安を分解してみます。夜営業の飲食店が昼に何かを始めようとしたとき、よく出てくる懸念は次のようなものです。
- 昼の片付けが終わらないまま、夜の仕込みに入れない
- スタッフが昼も夜も通しで入ることになり、疲弊する
- 厨房が昼の食材・器具でいっぱいになる
- 結局、昼の利益より段取りのコストが大きくなる
これらは実際に起こりうることです。ただし「起こりうる」のは、昼と夜の動線を分けないまま始めようとするからです。問題はメニューでも業態でもなく、時間と空間の整理ができていないことにある。
私自身、2009年から夜営業中心のホルモン店を続けてきて、清水駅前のこの場所で14年以上、夜の現場に向き合ってきました。だからこそ「夜を守りながら昼を作る」という設計の難しさは、体感としてよく分かります。それを前提に、どう組み立てるかを考えてきました。
参考になれば——と思う記事として、以前に夜営業へ影響させない昼営業設計の裏側でも触れましたが、今回はより「多角化」という発想の入り口にフォーカスして書き進めます。
一店舗から多角化する、というのはどういうことか
多角化というと、新しい業態の店舗を別に構える——そんなイメージを持つ方が多いかもしれません。でも私が考える多角化は少し違います。
今あるお店の「使われていない時間帯」「使われていない席」「使われていない厨房設備」を、別の収益源として機能させること。これが、私の言う一店舗からの多角化です。
新しく店を作るのではなく、今ある店舗を活かす——これが出発点です。
夜営業中心の飲食店では、昼間の10時から14時台はほぼ何も動いていないことが多い。その時間帯に、夜とは別のメニューで別のお客様を迎える。ただそれだけです。シンプルに聞こえますが、実際に機能させるには、昼と夜のオペレーションを完全に切り離す設計が必要になります。
実際にどんなタイムラインで動かしているか
山道家の実証店舗(清水駅西口徒歩約1分、カウンター5席)では、以下のような時間の流れで一日を設計しています。
- 10:00〜 昼営業の準備(スープの温め、タレ・鶏油の用意、麺・チャーシューのセット)
- 11:00〜14:00 昼営業(3時間・カウンター5席)
- 14:00〜14:30ごろ 片付け・清掃(昼の食材・器具を収め、厨房を夜仕様にリセット)
- 14:30以降 夜営業の仕込みへ移行
このタイムラインを守るためにこだわっているのが、昼と夜の「切り替えポイント」を明確にすることです。片付けの手順を決め、収納場所を昼夜で分けておくことで、14時に営業が終わった直後から夜の仕込みモードに入れる状態を作っています。
人員は基本2名。1名が接客・提供、1名が調理・片付けを担当します。これも最初から役割を固定しておくことで、動きのムダが出にくくなります。
「昼営業が夜に影響する」という状態は、この切り替えポイントと役割が曖昧なまま始めることで起きます。逆に言えば、ここさえ丁寧に設計すれば、夜の仕込みを圧迫せずに昼の営業を回すことは十分に可能です。
✓ ここまでのポイント
- 「夜に影響が出そう」という不安の正体は、昼夜の動線が整理されていない状態を想像しているから
- 多角化とは「新しい店を作ること」ではなく「今ある店の遊休時間を別の収益源にすること」
- 10時準備・11〜14時営業・14時以降に夜仕込みへ移行、という時間設計が核心
「10時準備・11〜14時営業・14時以降に夜仕込みへ」という流れは分かった。でも、自分の店の厨房配置やスタッフの動き方に当てはめたとき、どこをどう調整すればいいかが見えにくい——そこが一番詰まるところだと思います。山道家モデルの説明会では、オペレーション設計を店舗ごとに考える進め方も含めて紹介しています。
「本格的」と言われるために、裏で何をしているか
昼営業を組み込む際、もう一つ大切なのが「何を売るか」の設計です。ここで私が家系ラーメンを選んだのには、いくつか理由があります。
夜営業中心の店では、昼のためだけに長時間スープを炊き続けることは現実的ではありません。これは飲食業界で長くやってきた方であれば、肌感覚でわかるはずです。スープを炊くには燃料費と時間と技術が要る。それを昼の3時間営業のためだけに用意するのは、利益の構造上、成り立ちにくい。
では、どうするか——。私が行き着いたのは、「スープだけを本格的に見せようとしない」という発想の転換でした。
スープの質を担保しながら、タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法のすべてを調整することで、一杯のラーメン全体の満足度を高める。一つの要素に頼らず、複数の要素を組み合わせて「本格的」な評価を得るための設計です。実際に、山道家に来てくださったお客様からは次のような声をいただいています。
「真面目に家系をやっていると思わせる一杯」
実証店舗ご来店のお客様
「間違いなく正統派の家系ラーメン」
実証店舗ご来店のお客様
店内でガラを長時間炊いているわけではありません。それでもこういった声をいただけるのは、スープ単体ではなく「一杯の完成度」で勝負しているからだと思っています。
これは多角化の設計全体にも通じます。一つの要素を完璧にしようとするより、全体のバランスを整えることのほうが、短時間・少人数での運営には向いています。夜営業中心の店が昼に何かを始めるとき、「昼業態だけを完璧に作り込む」のではなく、「今の店の強みを活かしながら、昼の形を整える」という考え方が現実的です。
この商品設計の考え方については、ホルモン店でラーメン二毛作を始めた裏側でも具体的に触れています。あわせて参考にしてみてください。
店舗ごとに「最適解」は違う、という現実
ここまで書いてきたタイムラインや設計は、あくまで私の実証店舗での一例です。山道家モデルには一つの正解はありません。
たとえば、蕎麦店や定食屋では昼に既存の営業があるため、導入の形はまったく変わります。焼鳥屋や居酒屋でも、仕込みのタイミングや厨房の配置によって、昼営業の組み方は変わってきます。焼鳥屋の空き時間活用に可能性を感じる裏側では、そのあたりの思考過程を書いていますので、業態が近い方はそちらも参考にしてみてください。
私が伝えたいのは「この通りにやれば大丈夫」ということではありません。「こういう設計の視点で考えると、自分の店の最適解が見えてくる」という考え方です。昼営業を始めることで夜に影響が出そうという不安は、多くの場合、設計の問題として解決できます。ただその設計は、店舗ごとに丁寧に組み立てていく必要があります。
一店舗から多角化するというのは、派手なことではありません。今あるものを丁寧に組み直すことで、新しい利益の動線を作ることです。小さく始められることが、最大の強みだと思っています。
まとめ:夜を守りながら、昼を収益にする
「昼営業を始めたら夜の仕込みに影響が出そう」——この不安を持つことは正しい。ただ、その不安の答えは「やめておく」ではなく、「動線を整理する」ことにあります。
10時に準備を始め、11時から14時まで営業し、片付けを終えてから夜の仕込みへ移る。この流れを店舗ごとに丁寧に設計することで、昼と夜のオペレーションを分離することができます。
「一店舗から多角化する」という発想は、資金力でも規模でもなく、今あるお店の時間・空間・設備をどう使うか——という思考の転換から始まります。ラーメンを導入することが目的ではなく、利益を生み出すことが目的です。その手段として家系ラーメンが機能するかどうかを、まずフラットに考えてみてほしいと思います。
個別の相談は、電話でも受け付けています。
📞 054-363-2766(侍ホルモン清水駅前店/山道家)
夜営業を守りながら昼を収益化するための設計が、自分の店でも組み立てられるか確かめたいなら、まず全体像を見ることが先決です。オリジナルプランとブランドプランの違い、仕入先紹介・研修・開業サポートの内容を詳細ページで確認できます。


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