スープを炊かないラーメン営業前と後。負担はどう変わったか

ラーメン導入・開業ノウハウ

飲食店を長く続けていると、「昼間の時間が完全に死んでいる」という感覚を、どこかで持ち続けることがあります。家賃は一日分払っている。電気も、ガスも、その間も基本料金は動いている。なのに、昼間の厨房もカウンターも何も生んでいない。その感覚を持ったまま何年も経営を続けてきた方は、おそらく少なくないと思います。

私が清水駅前で「侍ホルモン清水駅前店」を始めたのが2009年のことです。夜営業に集中してきた17年の中で、一番長く引っかかっていたのが、まさにその「昼間の遊休」でした。ラーメンを始めようと決めたとき、最初に壁になったのはスープでした。「本格的な家系ラーメンを出すなら、朝から豚骨を炊かなければ」という考えが、まず頭をよぎる。でも現実には、夜の仕込みを抱えながら、朝から何時間もスープを炊き続けることは難しい。そのことを正直に認めるところから、今の形ができていきました。

この記事では、「スープを炊かない」という選択をする前と後で、実際の営業上の負担がどう変わったかを書いていきます。感想ではなく、仕込み・体力・夜営業への影響という3つの軸で具体的にお伝えします。

こんな方におすすめ

  • ✅ 昼営業を始めたいが、スープを炊く時間が取れないと感じている方
  • ✅ 夜営業の仕込みを守りながら、昼の収益源を作りたい方
  • ✅ 「本格感」と「オペレーションの現実」の両立に悩んでいる飲食店経営者
  • ✅ 業務用スープの活用を考えているが、味の設計が分からない方
  • ✅ 少ない席数・短い営業時間から、小さく始めたい方
スープを炊かないラーメン営業前と後。負担はどう変わったか | 山道家二毛作モデル

「炊かないと始まらない」と思っていた、導入前の状態

家系ラーメンを好きで食べ歩いてきたからこそ、横浜・吉村家をはじめとした本家の一杯がどれほどのものか、よく分かっています。だから最初は「スープを炊かなければ家系を名乗れない」という思い込みが強くありました。

でも少し冷静に考えると、その思い込みには現実的な問題がついて回ります。まず、夜営業の仕込みは昼過ぎから始まります。ホルモンや焼肉の下処理、タレの補充、備品の確認。これらを終えてから夜のオープンに備えるスケジュールは、すでにかなりタイトです。その中に「朝から4〜5時間、スープを炊き続ける」という作業を差し込んだとき、何かが必ず削られます。削られるのは、たいてい夜営業の仕込みの質か、あるいは店主や従業員の体力です。

「炊かないと始まらない」と思っていた時期は、昼営業のスタートそのものが遠のいていました。ハードルを自分で上げていたとも言えます。

「炊かない」を選んだあと、変わったこと

スープを店内で炊くことをいったん手放す決断をしたのは、「手を抜く」ためではありませんでした。むしろ逆で、「スープ以外の全体で勝負する」という設計に集中するためです。

具体的には、業務用スープをベースにしながら、タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法のそれぞれを調整することに時間を使いました。家系ラーメンの一杯を構成するのはスープだけではありません。タレの塩分バランス、鶏油の香りと量、麺の太さと茹で加減、チャーシューの食感と味付け、海苔やほうれん草の合わせ方、提供温度。これらを一つひとつ組み直すことで、最終的に丼の中に出来上がる一杯の完成度を上げていく作業に絞ったのです。

その結果、お客様からいただいた評価は次のようなものでした。

「山道家では、長時間店内で豚骨やガラを炊き続ける方式ではありませんが、スープだけでなく、タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法の全体を調整することで、本格的という評価を得ています。」

「本格的」「正統派」という言葉をお客様からいただいたとき、正直ほっとしました。炊いていないことを後ろめたく感じていた部分があったからです。でも、食べた人が「本物」と感じる一杯が出せているなら、それが正解だと今は思っています。良いか悪いかを最終的に判断するのはお客様です。

朝の仕込みという視点では、昼営業のスタートは10時台の準備開始で間に合います。チャーシューは前日に仕込んでおける。スープは温めて調整するところから始められる。これによって、夜営業に向けた午後の時間が以前とほぼ変わらずに確保できるようになりました。

✓ ここまでのポイント

  • 「スープを炊く=本格」という思い込みが、昼営業のスタートを遅らせていた
  • タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法の全体設計に集中することで、本格的という評価を得られた
  • 朝の仕込み時間が大幅に短縮され、夜営業の準備スケジュールに影響が出なくなった

タレ・鶏油・麺・チャーシューの全体設計で本格的な評価を得られると分かっても、「では自分の店では何から手をつければいいか」という部分が見えないと、動き出せない。山道家モデルの詳細ページでは、レシピ・仕入先紹介・オペレーション設計まで含めたサービスの内容を確認できます。説明会への申込みも同じページから可能です。

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夜営業への影響は「ほぼゼロ」が目標だった

昼営業を始めるにあたって私が一番大事にしたのは、夜営業の質を落とさないことでした。ホルモンや焼肉の夜営業は、積み上げてきた看板です。それを犠牲にして昼の売上を作っても、意味がない。二毛作というのは、どちらかを削るのではなく、どちらも成立させることが前提です。

スープを炊かない設計にしたことで、この「夜営業への影響ゼロ」という目標は、ほぼ達成できています。昼の11時〜14時の3時間、カウンター5席で営業し、片付けが終わる14時半ごろには厨房が夜の仕込み状態に戻っています。夜の開店準備は、昼営業を始める前とほぼ同じ流れで動かせています。

実際の運営は基本2名体制です。二人で回すラーメン店の一日に密着した記録でも触れていますが、少人数での動線設計が最初から組み込まれているため、余計な人員を増やさずに回せています。新しいスタッフを採用する余裕がない、という状況でも動けるのは、ここが大きいと思っています。

「負担が増えた」と感じた部分も、正直に書いておく

スープを炊かない設計にしたことで楽になった部分は多い。でも「何も変わらなかった」わけではありません。正直に書いておきます。

一つは、最初のレシピ設計に時間がかかったことです。業務用スープを使うといっても、そのままでは家系ラーメンにはなりません。タレの配合、鶏油の量と質、麺のメーカー選定、チャーシューの製法。これらを実際に試しながら調整する期間は、思ったより長くかかりました。実証店舗として今の形に落ち着くまで、かなりの改善を繰り返しています。

もう一つは、チャーシューの仕込みです。チャーシューは前日準備が基本ですが、仕込み量の管理と、夜営業の仕込み時間との調整は最初のうち混乱することがありました。5席ラーメン営業の一日に密着した記録の中でも、仕込みから片付けまでの流れを細かく書いていますが、この動線を決めるまでには試行錯誤が必要です。

ただ、これらは「始めてから改善できる種類の問題」です。スープを長時間炊き続けなければいけない、という物理的な制約とは性質が違います。設計を変えれば対処できる課題は、始めることを妨げる理由にはならないと思っています。

導入から3ヶ月後に変わっていたこと

山道家の実証店舗では、席数5席・営業時間11〜14時・基本2名体制で運営しています。月間の客数は約250〜350名、月商は約25万〜33万円という水準で動いています。これは営業日数や季節によって変動しますが、「5席・3時間」という小規模でも収益が生まれることの証明として、今も継続しています。

夜営業の負担という観点では、昼営業を始めた後、夜の売上が下がったことはありません。むしろ、昼に来てくれたお客様が夜の来店につながるケースも出ています。二毛作の副次的な効果として、昼と夜で客層が少し重なり始めたことは、清水駅前という立地と無関係ではないかもしれませんが、想定外の良い変化でした。

「新しく店を作るのではなく、今ある店舗を活かす」という考え方は、実際にやってみて初めてその意味が腑に落ちます。設備投資も、新たな賃料も、加盟金もなく、今持っているものを使って新しい利益源が動き始める感覚は、言葉で説明するよりも経験するとよく分かります。自店名でラーメン営業を始めた3ヶ月後のリアルにも、導入後の変化が具体的に記録されています。

まとめ:「炊かない」は妥協ではなく、設計の選択です

スープを炊かないことを選んだのは、楽をするためではありませんでした。夜営業を守りながら昼の利益を作るには、炊くことに縛られた設計では難しいと判断したからです。その代わり、タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法の全体設計に集中しました。結果として、お客様から「本格的」「正統派」という評価をいただけるようになっています。

夜営業への影響は、設計通りほぼありません。朝の仕込み時間は短縮され、チャーシューの仕込みなど慣れが必要な部分はありましたが、それは改善できる類の問題です。「昼間の厨房が眠っている」「家賃が昼は死んでいる」という状態が続いているなら、まず小さく試せる設計から考えてみることが、現実的な一歩だと思います。

山道家モデルについて、電話でのご相談も受け付けています。054-363-2766までお気軽にどうぞ。

「夜営業への影響ゼロを目指す」という設計の具体的な中身—仕込みの流れ、仕入先の選び方、チャーシュー製法まで—は、この記事では書ききれていない部分です。山道家モデルの詳細ページで、オリジナルプランとブランドプランの違いも含めて確認したうえで、説明会への参加を検討してみてください。

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