「夜だけの営業では、なかなか利益が残らない。でも、もう一軒お店を出す資金はない。」
こういう話を、飲食店の同業者から何度聞いたか分かりません。原材料費も光熱費も上がり続ける中で、売上の規模は変わっていないのに、手元に残る利益がじわじわ減っていく。でも物件を新しく借りるとなると、保証金・内装費・設備費・採用コスト……ざっと試算しただけで頭が痛くなる。
私自身も、長年そのジレンマを抱えてきた一人です。2009年に「侍ホルモン清水駅前店」を創業し、焼肉・ホルモンの夜営業を続けてきましたが、コロナ以降の環境変化と固定費の上昇を機に、「今ある店舗をもっと活かせないか」と本気で考え始めました。その答えとして行き着いたのが、夜営業の店舗で昼間に別業態を開く「二毛作経営」という考え方です。
この記事では、新規出店なしで収益源を増やしたい飲食店オーナーに向けて、二毛作経営の具体的な始め方をお伝えします。理論ではなく、実際に清水駅前で営業しながら積み上げてきた経験をもとに書いています。
こんな方におすすめ
- ✅ 夜営業中心で、昼間の客席や厨房が何も生んでいないと感じている方
- ✅ 新規出店の資金がなく、今の店舗内で収益源を増やしたい方
- ✅ ランチ営業を検討しているが、何の業態が向いているか分からない方
- ✅ フランチャイズ以外の方法で、自分の屋号のまま新業態を始めたい方
- ✅ 少人数・短時間でも成立する営業モデルを探している方
二毛作経営とは何か――「新しく作る」ではなく「今ある店を活かす」
農業における二毛作は、同じ田畑で一年に二種類の作物を育てることを指します。飲食店の二毛作経営は、これと同じ発想です。一つの店舗で、昼と夜に異なる業態を運営する。そうすることで、家賃や設備費を「二回分稼ぐ」仕組みを作る。
夜営業中心の店舗には、昼間に確実に「遊んでいる時間」があります。客席は空き、厨房も使われず、それでも家賃は一日分かかっています。この遊休時間を収益に変えることが、二毛作経営の核心です。
よく誤解されるのですが、二毛作経営は「昼営業をただ追加する」ことではありません。夜営業の負担を増やさず、既存の設備と人員の範囲内で、新しい利益源を作ることが目的です。夜営業の店舗を昼に活用するメリットは「売上を増やす」ことだけでなく、固定費の回収効率を根本的に変えることにあります。
なぜ新店舗を出さず「今の店舗」を使うのか――コストの現実
新規出店に踏み切れない理由は、単純に資金の問題だけではありません。物件取得から開業までに必要なものを並べると、その重さが分かります。
- 保証金(家賃の数ヶ月分)
- 内装・設備工事費
- 厨房機器の導入費
- 新規スタッフの採用・研修費
- 開業後の運転資金
これだけの投資を回収するためには、新店舗が一定の売上を安定して出し続けなければなりません。しかし、現在の店舗でさえ利益が薄くなっている状況で、もう一軒を起動させるリスクは相当なものです。
一方、今ある店舗で昼業態を追加する場合、厨房・客席・設備はそのまま使えます。新たに発生するコストは、食材と仕入れ先の開拓、商品設計の研究、最小限の備品程度です。店舗の遊休時間を収益化する具体的な方法については別記事でも詳しく書いていますが、要するに「ゼロから箱を作る必要がない」ことが、最大のコスト優位性です。
実際に始めるための3つのステップ
では、二毛作経営を具体的にどう始めるか。私自身が清水駅前の店舗で実践してきた流れをもとに、三つのステップでお伝えします。
ステップ1:昼の「何時間・何席」から始めるかを決める
最初から「フルで昼営業をやろう」と考えると、仕込みが夜の準備を圧迫します。まずは「カウンター5席・11時〜14時の3時間」という小さな枠から考えてみてください。私の実証店舗もこの規模から始めました。
席数を絞るのには理由があります。少ない席数なら、食材の無駄が出にくく、少人数で回せます。売れなかったときのロスも小さい。失敗してもリカバリーが効く。これが「小さく始めることが最大の強み」である理由です。
ステップ2:夜営業に影響しない商品を選ぶ
昼業態で扱う商品は、夜の仕込みと干渉しないことが重要です。たとえば夜に焼肉・ホルモンを提供している店舗が、昼に同じ食材を使うラーメンを始める場合、仕入れルートを共有できる部分もあります。逆に、夜と昼で全く異なる食材が必要な業態は、仕込みの負担が増えます。
私が家系ラーメンを選んだのも、夜のホルモン営業とオペレーションが切り離せる形に設計できたからです。10時に準備を始め、11時から14時まで営業し、片付け後に夜営業の仕込みに移る。この流れが店舗ごとに整理できているかどうかが、二毛作経営を継続できるかどうかの分かれ目です。
ステップ3:「客単価×回転数」で月商の目安を出す
感覚でなく、数字で見通しを立てることが大切です。たとえばカウンター5席、客単価950円、1日に50名が来店するとします。月に20営業日であれば、月商は約95万円……ではなく、もっと現実的な数字から始めてください。
私の実証店舗の実績は、月間客数が約250〜350名、月商が約25万〜33万円です。5席・3時間・基本2名という規模でこの数字が出ています。この数字そのものが「保証」ではありませんが、小規模な昼営業でも収益を生み出せることの実例として見てもらえれば十分です。季節や営業日数によって変動することも含めて、リアルな参考値として使ってください。
✓ ここまでのポイント
- 二毛作経営は「新しく店を作る」のではなく、今ある店舗の遊休時間・設備・客席を使う発想
- 新規出店のコスト(保証金・内装・採用など)をほぼかけずに、新しい利益源を作ることができる
- まず「何席・何時間」から始めるかを決め、夜営業に干渉しない設計をすることが継続のカギ
「何席・何時間から始めるか」「夜の仕込みに干渉しない商品設計とは何か」——記事を読んで、自分の店に当てはめようとしたとき、具体的な手順が見えにくいと感じている方もいるはずです。山道家モデルの詳細ページでは、レシピ・仕入先紹介・オペレーション設計を含む導入内容と、説明会の申込み方法を確認できます。
商品設計で大切なこと――「炊き続けられるか」より「満足させられるか」
昼業態でラーメンを始めようとすると、「スープを何時間も炊かなければいけないのでは」と心配する経営者が多いです。実際には、この心配が多くの人の参入を阻んでいます。
私が行き着いた答えは、「スープだけを頑張るのではなく、一杯全体を設計する」という考え方です。スープ・タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法のそれぞれを丁寧に組み合わせることで、お客様が「本格的だ」と感じる一杯を作ることはできます。実証店舗に来てくださったお客様からは、次のような声をいただいています。
「真面目に家系をやっていると思わせる一杯」
実証店舗ご来店のお客様
「間違いなく正統派の家系ラーメン」
実証店舗ご来店のお客様
これらの評価は、長時間スープを炊き続けたからではありません。タレの配合、鶏油の使い方、麺の選択、そしてチャーシューの仕上げ方——それぞれを調整し続けた結果です。「チャーシューが本当に美味しい」という声も複数いただいており、ラーメンの中の一要素が全体の印象を大きく左右することを実感しています。
商品設計は「どこで炊くか」ではなく「何を届けるか」で考えることが、昼営業を無理なく続けるための本質だと思っています。
二毛作経営を長続きさせるために――秋冬に向けた準備の考え方
二毛作経営を始めるタイミングとして、私がよく相談を受けるのが「いつ始めればいいか」という点です。これは農業の二毛作に似ていて、「どの季節に何を植えるか」の感覚に近い。
たとえば、秋から冬にかけての時期はラーメン需要が高まります。夏に比べて温かい食事へのニーズが上がり、昼時に温かい一杯を求める客層が増える。夜営業が忙しくなる年末に向けて、10月・11月あたりから昼ラーメンを安定稼働させておくと、冬の繁忙期を両軸で迎えられます。
一方、春や初夏は昼の集客が安定しやすく、「試しに始める」時期としても向いています。新年度のタイミングで周辺のオフィスワーカーや学生が増える地域なら、3〜4月に開始して客層をつかむ方法もあります。
重要なのは、「完璧に準備が整ってから始める」ではなく、店舗の空き時間を収益化するステップを踏みながら、小さく動かして改善し続けることです。季節に合わせて調整できる余白を持ちながら始めることが、二毛作経営を無理なく育てるコツです。
まとめ――一つの店舗で、もう一つの利益源を育てる
新規出店ができないからといって、打ち手がないわけではありません。今ある店舗には、まだ使われていない時間と空間があります。昼間のカウンター席、使っていない厨房、誰も座っていない客席——それが毎日、家賃として積み上がっている。
二毛作経営の本質は、その「もったいない時間」を利益に変えることです。5席からでも、3時間からでも、始められます。大切なのは、あなたのお店に合った形で動かすことです。一律の答えはなく、店舗ごとの最適解を探しながら育てていく。それが私の考える二毛作経営の始め方です。
記事の内容についてのご質問や、自店への適用について気になることがあれば、お電話でお気軽にどうぞ。054-363-2766(山道家二毛作モデル)までご連絡ください。
「今ある店舗の昼間を収益に変える」という方向性は決まった。次に必要なのは、自分の店舗に合った具体的な設計です。山道家モデルの詳細ページでは、実証店舗の実績をもとにした導入プランと説明会への申込み方法を掲載しています。まず内容を確認するだけでも構いません。


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