夜営業だけを続けている飲食店の多くが、実は固定費の半分以上を「何も生み出していない時間」に支払っています。家賃・光熱費・設備のリース料は、店が開いていても閉まっていても同じだけ発生します。昼間の空き時間を「仕方ない」で終わらせると、その分だけ利益が薄くなる構造が続きます。
この記事では、「固定費を活かす」という言葉が実際の現場でどんな意味を持つのか、特に「昼営業を始めたら夜に影響が出るのでは」という心配にどう向き合うかを、具体的な流れと注意点を交えながらお伝えします。
こんな方におすすめ
- ✅ 夜営業中心で、昼間の店舗や厨房が空いている方
- ✅ 昼営業を検討しているが、夜の仕込みへの影響が心配な方
- ✅ 固定費を削れない中で、新しい利益源を探している方
- ✅ 少人数・短時間でも収益を生み出せる業態を知りたい方
- ✅ フランチャイズ以外の選択肢で昼営業を始めたい方

「固定費を活かす」とは、具体的に何をすることですか?
固定費を活かすとは、すでに支払っている家賃・設備・光熱費などのコストに対して、新しい稼働時間をあてがうことです。言い換えると、「今ある店舗に収益を生む時間を追加する」という発想です。
夜だけ使っているカウンター席は、昼間は何もしていません。厨房の火台も、冷蔵庫も、換気扇も同じです。それらを昼の数時間だけでも動かせば、追加の家賃を払わずに売上の場所が増えます。新しく物件を借りるのではなく、今ある場所を賢く使う。それが固定費を活かすということです。
私自身、2009年から「侍ホルモン清水駅前店」を夜営業中心で運営してきました。17年間この仕事をしていて、昼間のカウンター席が何も生まないことへのもったいなさは、ずっと頭のどこかにありました。「夜のために整えた設備を、昼も使えないか」という問いが、山道家を始めるきっかけになっています。
なぜ昼営業が「夜に影響する」と感じるのですか?
多くの経営者が昼営業をためらう理由の中で、いちばんよく聞くのが「夜の仕込みが後ろ倒しになりそう」「スタッフの体力が持たない」という心配です。この感覚は正直なところ、よくわかります。
ただ、影響が出るかどうかは「業態の設計」によって大きく変わります。問題の根本は、昼営業そのものではなく、営業時間・片付け・仕込み・スタッフの動線が整理されていないことにあります。
逆に言えば、動線を先に設計してから昼営業を始めれば、夜への影響は最小限に抑えられます。たとえば提供するメニューを絞る、片付けの手順をあらかじめ決める、ランチ終了後の30分をバッファとして確保するといった工夫です。「とりあえず昼も開けてみる」ではなく、「夜に影響を出さない設計を先に作ってから開ける」が正しい順番です。
具体的にどんなスケジュールで回せばよいですか?
山道家の実証店舗では、おおよそ次のような流れで昼営業を組んでいます。
10:00ごろ:仕込み開始。スープの温め、チャーシューのカット、薬味の準備など。量が絞られているので、所要時間は限られます。
11:00〜14:00:営業時間。カウンター5席のみ。この規模なら基本2名で回せます。
14:00〜14:30ごろ:片付け・清掃。夜営業と共有する設備はリセットしておきます。
14:30以降:夜営業に向けた仕込みへ移行。
このサイクルが成立する背景には、「商品数を絞る」という設計があります。家系ラーメンを軸に、サイドメニューを限定することで、仕込み・調理・片付けのすべてがシンプルになります。品数が多いほど仕込みが複雑になり、夜への影響も大きくなる。だからメニューの絞り込みは、昼夜二毛作の核心でもあります。
スタッフについては、昼専任のパートを1名加えるケースもあれば、夜スタッフが早入りして昼も担当するケースもあります。どちらが合うかは店舗の状況次第です。一律の正解はなく、店舗ごとの動線を確認しながら調整することが重要です。
✓ ここまでのポイント
- 固定費を活かすとは、今ある店舗に新しい稼働時間をあてがうことで、追加の家賃なしに収益の場を増やすことです。
- 昼営業が夜に影響する原因は、動線の未整理にあります。先に設計を作ることで影響を抑えられます。
- 10時準備・11〜14時営業・14時以降に夜仕込みへ移るサイクルを基本とし、店舗ごとに調整します。
5席・3時間の営業でも、本当に収益になりますか?
「たった5席で採算が取れるのか」という疑問は、よく出てきます。実際の数字をお伝えすると、山道家の実証店舗では月間250〜350名のお客様にご来店いただき、月商は約25万〜33万円で推移しています。客単価は約950円です。
ただし、この数字よりも大切な意味があります。実績が示していることの核心は、「5席・3時間という小規模営業でも収益を生み出せる」という事実そのものです。季節や営業日数で数字は変動しますが、新しく物件を借りることなく、今ある空き時間に利益の芽を作れることが重要です。
既存の固定費はすでに支払われています。そこに25万円の売上が加わるとき、それはほぼ純粋な上積みになります。ゼロから新店を出した場合には発生する、保証金・内装費・新規採用コストがないからです。
「間違いなく正統派の家系ラーメン」
実証店舗ご来店のお客様
「チャーシューが本当に美味しい」
実証店舗ご来店のお客様
家系ラーメンというジャンルは、長時間スープを炊き続けることが「本格」の証明だと思われがちです。ただ、山道家では長時間の店炊きに依存せず、タレ・鶏油・麺・チャーシュー・提供方法の全体を調整することで、お客様からこうした評価をいただいています。昼営業が夜に影響しない設計と、商品の満足度は、両立できます。
夜営業への影響を最小化するために、最初に決めておくべきことは何ですか?
昼営業を始める前に整理しておくと後が楽になることが、いくつかあります。
①提供メニューの数と種類:品数が少ないほど、仕込みも片付けも速くなります。家系ラーメンのように軸が明確な業態は、オペレーションの設計がしやすい。
②夜営業と共有する設備・食材の洗い出し:どの鍋を使うか、どの冷蔵庫のスペースを使うかを先に決めておかないと、夜の仕込みが始まるときに「場所がない」という問題が起きます。
③昼営業終了後の清掃・片付けの手順書:手順が属人化すると、担当者が変わるたびに混乱します。簡単なチェックリストを作っておくだけで、夜への引き渡しがスムーズになります。
④スタッフの勤務パターンの再設計:夜スタッフを昼にも使う場合、休憩時間の確保が必要です。無理なシフトは、夜営業のパフォーマンスを下げます。最初から「夜に影響を出さない前提」でシフトを組むことが大切です。
これらは「始めてから考える」より「始める前に決める」ことで、ほとんどのトラブルが未然に防げます。小さく始められることが最大の強みですが、だからこそ最初の設計にだけは時間をかける価値があります。
まとめ:固定費を活かすことは、今ある店舗に新しい役割を与えることです
「固定費を活かす」という言葉は、どこか抽象的に聞こえるかもしれません。ただ実際には、とてもシンプルなことです。毎月払っている家賃の対価として、昼間の数時間を新しい収益の場所に変える。それだけのことです。
昼営業が夜に影響するかどうかは、設計次第です。動線・メニュー数・スタッフの動きを先に整えることで、夜営業の質を落とさずに昼間の稼働を追加できます。「やってみてから調整する」ではなく、「調整してから始める」が、二毛作で長続きするためのコツだと私は思っています。
昼の空き時間をどう使うか、夜の仕込みとの両立をどう設計するか、具体的に話せる場を設けています。「うちの店で本当に成立するか」という段階から、一緒に考えます。
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