炭火を育てる一日の仕事に密着しました

仕事が終わって、さあ一杯——そう思って飲み屋街に出ても、なんだか気持ちが上がらない夜ってありませんか。

どこに入っても似たような内装、似たようなメニュー。タブレットで注文して、料理が来るまで無言でスマホを見て、気づいたら1時間経っていた。そういう夜、「今日は来なきゃよかったかな」と感じたことのある方は、少なくないと思います。

「料理の前に、場の空気が大事なんですよね」と話すのは、侍ホルモン 清水駅前店のオーナーシェフ・鈴木諭さん。2009年の創業から17年、清水駅前でホルモン焼き居酒屋を続けてきた人です。

今回は、その鈴木さんの一日に密着しました。炭に火が入るまでの準備、仕込みの手順、そして営業中のやりとり——「七輪を囲む時間」がどうつくられているのかを、そのまま追ってみました。

こんな方におすすめ

  • ✅ 仕事帰りに、ゆっくり落ち着いて飲める店を探している方
  • ✅ チェーン店とは違う、個人店ならではの雰囲気を楽しみたい方
  • ✅ 炭火七輪焼きがどんなものか、実際に知りたい方
  • ✅ 清水駅周辺でホルモン居酒屋を探している方
  • ✅ 侍ホルモンの日常が気になる方
炭火を育てる一日の仕事に密着しました | 侍ホルモン 清水駅前店

14:00 仕込みは「においを消す」ところから始まる

営業開始は17時30分。鈴木さんが店に入るのは、その3時間以上前です。

最初の作業は、ホルモンの下処理。「ホルモンは臭い」と思っている方がいますが、それは下処理が十分でないものを食べた経験によるところが大きい、と鈴木さんは言います。

「脂や余分な膜を丁寧に取り除いて、何度も水で洗って。これをちゃんとやるかどうかで、口に入れたときの印象がまったく変わります。手を抜くと、どこかに残るんですよ、変な感じが」

調理師として18年のキャリアを持つ鈴木さんにとって、この工程は「料理の前の料理」。地味で時間がかかりますが、ここで生まれる清潔感が、お客様が安心してホルモンを楽しめる土台になると話してくれました。

下処理が終わったら、特製ダレの確認と補充。塩ダレと味噌ダレ、それぞれのバランスを味見して整えます。「毎日やっていても、その日によって微妙に違うんです。素材の状態も、気温も変わるので」

15:30 炭に火を入れる。ここが一日の「始まり」

仕込みが一段落したころ、鈴木さんが七輪を並べ始めます。

侍ホルモンでは、各テーブルに卓上七輪を置いてお客様自身に炭火で焼いていただくスタイルをとっています。そのため、炭の準備は営業前の重要な工程のひとつです。

「炭って、ただ火をつければいいわけじゃなくて。よく燃える状態になるまで時間がかかるんです。最初から七輪に入れてもダメで、一度しっかり起こしてから移す。急ぐと煙が出たり、火力が安定しなかったりして、せっかくの炭火焼きの良さが半減してしまう」

備長炭に近い火が安定するまでの時間を、鈴木さんは「炭を育てる時間」と呼んでいます。タイトルにある「炭火を育てる」という言葉は、まさにここから来ています。開店前のこの時間が、お客様が七輪の前に座ったときの焼き心地に直結している——そう考えると、準備の丁寧さの意味が分かります。

「お客様が来てから炭がまだ落ち着いていない、なんてことは避けたい。最初の一枚を焼いたときに、ちゃんと炭の良い香りがして、火力が安定している。それが大事」

✓ ここまでのポイント

  • ホルモンの下処理は時間をかけて丁寧に行うことで、臭みのないクリーンな味わいが生まれる
  • 炭火は「起こしてから育てる」工程があり、開店前の準備が七輪焼きの質を決める
  • 仕込みから炭の準備まで、すべてお客様が席に座る前の話

17:30 「いらっしゃいませ」から始まるもう一つの仕事

開店と同時に、常連のお客様が暖簾をくぐります。清水駅西口から徒歩約1分という立地もあって、仕事帰りにそのまま来られる方が多い。

鈴木さんが気にするのは、注文より先に「今日はどんな感じで楽しみたいか」を読むことです。「軽く一杯だけ、という方には無理に量を勧めない。しっかり食べたいなら、最初に何品か出す順番を提案する。そのほうが、後から後悔しない」

初めてご来店になる方や、ホルモンを食べ慣れていない方には、部位の特徴を簡単に説明しながら案内しています。「難しいことは言わなくていい。コリコリした食感が好きかどうか、脂の甘みが好きかどうか、それだけ聞ければだいたい分かります」

こうした案内をするうちに、「ホルモンが苦手だと思っていたけど、初めてでも安心して注文できた」と言ってもらえることが増えてきた、と鈴木さんは話します。部位の名前より先に、食べる楽しさを伝えることを大事にしているからだと感じます。

宴会のグループが入ると、店内の雰囲気ががらりと変わります。七輪を囲んで笑い声が上がり、肉を焼く香りが広がる。そういう時間が、鈴木さんの言う「リセットの時間」そのものだと、密着しながら改めて感じました。

「宴会で利用したら参加者全員に喜ばれた」

常連のお客様より

この声は、決して珍しいものではありません。掘りごたつの座敷席(最大27名収容)や半個室を使った宴会は、歓迎会・送別会・忘年会など年間を通じて利用されています。鈴木さんが「宴会は幹事さんが一番緊張している」と話すように、コース内容と飲み放題の構成をできるだけ分かりやすくしているのも、その緊張を少し和らげたいという気持ちからきています。

21:00 炭火の前で生まれる会話

営業も後半に入ると、各テーブルで七輪のペースが落ち着いてきます。最初に勢いよく焼いていたお客様が、ゆっくりお酒を楽しみながら話し始める時間帯です。

「このくらいの時間が一番好きですね。肉を焼くことに集中していたのが、だんだん会話の方に移っていく。炭火の前って、なんか話しやすいんですよ。正面じゃなくて、横に並んで火を見てる感じになるから」

七輪を囲む、という形式が自然と生む距離感がある——そう話す鈴木さんの言葉には、17年間お客様を見てきた観察眼があります。タブレット注文や効率化とは違う、「人が集まって食べる場」としての居酒屋の原点に近いものを、この店は今もそのまま持っています。

牛骨塩もつ鍋をシメに頼む方も増えるのがこの時間帯。牛骨をじっくり炊き上げたスープは、焼き物のあとに飲むと体に沁みる、と常連の方からよく言われるそうです。「一年中注文が入るのは、それだけ飽きない味だということかな、と思っています」と鈴木さんは笑って話してくれました。

23:00 片付けながら、明日の仕込みを考える

営業終了後、七輪の炭を処理し、テーブルを拭き、翌日の仕込みで必要なものを確認する。この時間は誰もいない店内に、炭の香りがかすかに残っています。

「毎日やっていると、今日は何が売れたか、どの部位を次はもう少し増やそうか、自然と考えながら手を動かしています」

17年続けてきた積み重ねが、この淡々とした時間の中にある。派手さはないけれど、確かなものが積まれている——そんな印象を受けました。

まとめ:一日の疲れを持ち込んでいい場所がある

今回の密着を通じて感じたのは、侍ホルモンの一日が「お客様が七輪の前に座る前」から始まっているということです。

下処理の丁寧さ、炭を育てる時間、部位の説明の仕方——どれも、仕事帰りに立ち寄った方が「来てよかった」と思える時間をつくるための準備です。チェーン店の均質な空気感とは違う、個人店ならではの体温のようなものが、この店には確かにあります。

今日も一日お疲れさまでした。もし清水駅で降りる機会があれば、西口を出てすぐの暖簾をのぞいてみてください。七輪の前に座って、ゆっくり肉を焼きながら過ごす時間を、ぜひ一度体験してみていただけたら嬉しいです。

ご予約・メニューのご確認は以下からどうぞ。初めての方のご来店も、いつでもお待ちしております。

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